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海外学生派遣関連事業 研究成果レポート
1.事業実施の目的
CATE2009 (Computers and Advanced Technology in Education)(学会等の主催団体 IASTED)
2.実施場所
アメリカ合衆国 セント・バージン諸島 セント・トーマス島
3.実施期日
平成21年11月21日(土)から11月28日(土)
(注)帰途、米国内空港トラブルにより帰国が1日遅れた。
	
4.成果報告
●事業の概要
主要な参加(聴取)タイトル
- 1)
 - Developing Informal Education Through Mobile Collaborative Learning
モバイル機器を用いて、時や場所に依存しない連携交流により非公式教育(集団の成員の相互作用により行われる教育)を開発した。 適切に設計されたアプリケーションを使用すれば、非公式教育につながる状況を支援・改善できる。この発表では、非公式教育の開発にモバイル協調学習を用いる新しい提案がなされた。その考え方と設計決定を図に示したプロトタイプインタフェースと同時に、この観点からのアプローチが提示された。 また、非公式教育のときにアプローチの影響についての議論がなされた。非公式教育という観点からモバイル学習を取り上げたユニークな研究である。 - 2)
 - Development and Evaluation of the Flower Identification Database for Mobile with A Geo-Tagged Picture Map
本論文は、今大会の最優秀論文賞を受賞した。
花の識別に使用できるデータベースを備えた、GPSロガーを用いGeoタグで関連付けられた観察の絵図を作成するモバイル・システム開発と試験運用によるシステム評価の発表であった。データベースには220品種の花の961枚のカラー写真が登録されている。 季節、色、および名前で花を特定する機能,種子の散布などのように観測することが難しい場面を示している高解像度ビデオクリップ閲覧機能,区別することが難しい同様の花を特定する方法の詳説。そして、GPS信号データに基づきGoogle Mapsに関する観察のコメントと共に写真を撮って送信する機能などを有している。 野外作業の一部としての208人の大学2回生が野性の草花の観測実験に利用し、システム評価により有効性の検証が行われた。
本発表は日本の研究者によるものであった。PSPの携帯性と大きな画面というデバイスの特性を活かし,そこにGPS機能を連動させるというアイデアを取り入れたユニーク性が高く評価された。 - 3)
 - Flying WIFI Robots as Mobile Research Platforms
本論文はベスト5に選定された。
ラピッドプロトタイピングシステムとして市販の電子基板をカスタマイズして作製できる、安価な飛ぶ移動通信綱の開発・運用テストの発表がなされた。このプラットホームは、コンピュータ技術科学を研究する学部と修士の学生を動機づけるために適用された。4機の回転翼を備え、電池で稼働する(上昇する)移動通信体である。地上基地局が障害された場合や電波の通り難い環境でも、このロボットを飛ばして中継すれば、臨時の移動体通信が可能となる。ただ、現状では電池容量が小さいため、20分程度しか飛行できないという説明があった。すべての必要なタスクを実現させるための制御機構や姿勢制御用センサーシステムなどと、モバイルプロトタイピングプラットホームの現在のアーキテクチャ・コンセプトについてのプレゼンが行われた。
とてもユニークなコンセプトの教育・実践教材、また実用的な臨時飛行型移動体通信基地デザインという点でも聴衆の関心を集めた。 
<印象>moodleに関わるコースウェアや実践事例の発表が数本あり、徐々にプラットフォームとして認知度があがっていることを実感した。放送大学ICT活用・遠隔教育センターでもmoodleを基盤としたeラーニングの研究が進んでいるが、大学で組織的に取り組むFDだけでなく、パイロット的な研究においてもこれを用いているケースが増えている
●学会発表について
A DVD Movie-based CALL System Enabling Control of Learner Environment via the Web という題目で、英語教育実践研究分担者である野口氏、小山氏、岩崎氏とともに連名で論文(full paper)を投稿、それが審査を通過して、今回の学会発表に臨んだ。
会場では、無線LANサービスが提供されていた。3月の発表においても、会場での接続状態が悪く、出国前に予定していたプレゼン内容を場現地入り後に全面改定するという作業を行ったため、今回も現地到着直後(22時頃)より会場周辺で調査を実施した。若干速度は遅かったが、会場ホール外では特に問題がなかったため、そのまま第1日の発表に参加した。発表が行われる中チェックをしたところ、参加者が増えたためか、ホールに入ったためか、ホール内では無線LANの受信状態が極端に悪く、発表・デモに支障をきたすことが判明した。
初日のセッション終了後、発表内容・デモ内容の修正を実施。発表は9時からのセッションの2番目であったので、会場の責任者に頼み込んで、朝8時過ぎから最前列に発表用機器をスタンバイ状態(インターネットに接続済みのまま)でセッティングすることにした。1番目の発表がキャンセルされたことも手伝って、スムーズに発表・デモが進行した。
発表概要(スライド内容)は以下である。
- 1.
 - Outline
 - 1.
 - Aims
 - 2.
 - Effectiveness of movies and captions
 - 3.
 - Teacher control
 - 4.
 - Learning flow
 - 5.
 - Pilot study: Student activities
 - 6.
 - Conclusions
 - 7.
 - Future work
 - 2.
 - Aims
 - ・
 - Promote learning language by enjoying movies
 - ・
 - Formulate objectives in terms of specific language activities or functional ability in a particular domain (CEFR Chap 8.1)
 - 3.
 - Effectiveness of movies and captions
 - ・
 - Closed captioned programs increased student motivation for better language learning (Goldman and Goldman, 1988)
 - ・
 - DVD feature films provide a wide array of pedagogical options and represent a rich resource of intrinsically motivating materials for learners (King, 2002)
 - ・
 - Subtitled movie DVDs equip students with relevant knowledge of target culture (Kusumarasdyati, 2007)
 - 4.
 - Moodle (LMS) environment
 - ・
 - Placement of system (software and materials) on Moodle server at The Open University of Japan
 - ・
 - Student accounts on Moodle system
 - ・
 - Free access from anywhere at any time
 - 5.
 - Teacher control (figure)
 - 6.
 - Pilot study
 - ・
 - Two groups of first- and second-year undergraduate students at universities
 - ・
 - Number of students: 13 to 17 students per class
 - ・
 - Student level: false beginners
 - ・
 - Student major: English majors
 - ・
 - Classroom environment: CALL classroom
 - 7.
 - Student activities
 - Tasks
 - 1.
 - Getting time codes of scripts
 - 2.
 - Searching for “Starting a query” scenes
Coloring sentences found
Role-playing in front of classmates 
----- Demonstration ----------------------------------------------
- 8.
 - Student comments (figure)
 - 9.
 - Conclusions (1)
 - ・
 - We have added better teacher control to our DVD movie-based CALL system accessible from the Web under the following DVD playback conditions:
 - ・
 - Audio track is English
 - ・
 - Original subtitles of the DVD are hidden
 - ・
 - All chapters are available for viewing except for the menu
 - 10.
 - Conclusions (2)
 - ・
 - We piloted the system with two groups of students and received positive feedback.
 - ・
 - We need to better prepare students for computer readiness.
 - 11.
 - Future work
 - ・
 - Computer readiness training
 - ・
 - Collaborative work with different universities via Web access
 - ・
 - Further development of integrated tasks
 - ・
 - Adaptation to other types of audiovisual genres (e.g., podcasts, webcasts)
 
●本事業の実施によって得られた成果
<ベスト5論文に選定された>
全投稿論文54本に対し、世界各国の審査員32名が学会開催前に投票し、ベスト5に選定された。
<評価の概要>
システムの内容や著作権に関する質問はなかった。「speakingにはどのように適用されるのか。」という将来的な課題に関するものが1件あった。前回の発表内容を知っている参加者から、moodleの学習者ログだけではなく、より細かい操作記録を取得できる点が評価された。eラーニングにおける学習評価として「ログの分析」に関心が集まっているので、今後はデータマイニングを含み学習行動を追跡できるように設計しておくべきだという意見をもらった。
<博士論文研究に資する意義>
今回の発表は、博士論文課題「発話情報の文字列化(字幕)を用いた学習支援環境の研究」における、“字幕の活用方法と評価ツール”という位置づけである。前回のシステム開発成果の上に、吹き替え音声(日本語)やオリジナル字幕(日本語)を学習者が任意に選択して学習できるだけではなく、それを強制的に利用させないように設定する「教室モード」を追加した。市販の映画DVDには、通常、発売国の母語でサブタイトル(字幕)が入っている。しかし、それは、健聴者の娯楽を支援する目的で作成されており、利用者の意図によって(語学学習,聾者への情報保障など)編集・修正することは不可能である。それらを遠隔地から制御可能にしたことにより、各地に分散する聴障学習者に一か所に集まってもらうことなく多様な字幕の効果をWeb上で評価(アンケートなどによる主観的評価だけでなく、操作記録を含めて)することが可能になった。また、さらに字幕の検索機能の実用性を高めた(以前はブラウザの検索機能だけしか利用できなかった)ことにより、聴障学習者にとって判り難いところを検索する活動の記録がとれるようになった。実際に、健聴者の英語学習の場面において、CEFR(Common European Framework of Reference for Languages ヨーロッパ言語共.通参照枠組み)の中で提唱されている日常会話の機能(初対面の挨拶,次の行動を提案する場面など)を学習者自身が検索し、ビデオと同期させて抽出・検証し、それを他の学習者の前でロールプレイする活動を行った。その結果、学習者の操作記録から、ほとんど利用説明をしなくても使えること、学習の動機づけに効果があることを確認した。
現在、字幕にどのような方式で非言語情報を付与・提示するか、検討中である。これまで、遠隔地の研究協力者とメール(聴障者の場合は電話が使えない)で議論してきたが、本成果を活用して、同じDVDタイトルを閲覧しながら同時同期的に字幕の検証が可能となった。この点で、博士研究に資する意義は大きい。
●本事業について
※文化科学研究科学生派遣事業に参加した感想や、専攻を超えた教育研究活動の推進に関するご意見等、ご自由にお書きください。 論文を作成し、世界の研究者に理解してもらえるようにプレゼンの練習ができることは、とても励みになります。また、半年近くをかけてプレゼンの内容を吟味していく過程は、自分の研究の客観性を高める上でも非常に役立っております。ありがとうございます。