総研大 文化科学研究

論文要旨

初期および中期ラスター彩陶器白色釉薬の化学組成

総合研究大学院大学 文化科学研究科 日本歴史研究専攻 新免 歳靖

中近東文化センター附属博物館 岡野 智彦

東京学芸大学 文化財科学研究室 二宮 修治

キーワード:

ラスター彩陶器、白色釉薬、イラク、エジプト、イラン、エネルギー分散型蛍光X線分析、クラスター分析、化学組成

10世紀から13世紀にかけてイラク・エジプト・イランで製作されたと推定されるラスター彩陶器片40点を対象とし、白色釉薬の化学組成を比較するために、エネルギー分散型蛍光]線分析を行った。その結果、すべての資料には錫鉛釉薬が用いられていたことがわかった。また、クラスター分析の結果、釉薬の化学組成に応じて大きく4群に分類された。この分類は胎土分析の分類結果とほぼ同一の結果となった。また、釉薬の化学組成については、産地の移動に伴ってPbOの濃度に変動が認められ、低濃度から高濃度へ変化し、再び減少に向かう変遷が明らかとなった。これらの結果から釉薬の化学組成によってもラスター彩陶器の生産地推定が可能であることが明らかとなった。