総研大 文化科学研究

論文要旨

新疆オイラド・モンゴル社会における
活仏の影響

―シャリワン・ゲゲン14世の円寂に着目して―

総合研究大学院大学 文化科学研究科 地域文化学専攻  ナムジャウ

キーワード:

オイラド・モンゴル、活仏、シャリワン・ゲゲン

本研究では、新疆のオイラド・モンゴル世界における世俗的活仏であるシャリワン・ゲゲン14世の円寂を受けて、彼の出身地であるホボクサイル・モンゴルの人々の間で行われた哀悼活動と、転生を願う祈祷をめぐる活動などについて、現地調査を通して得たデータを整理し、シャリワン・ゲゲン14世の影響力を検討した。

シャリワン・ゲゲン14世は信者の崇敬を集めるだけでなく、中国政府の要職にも任命されていた。そのため国家上層部から民間まで、自由に動けることで、政府レベルから民間レベルまで多くの情報を持っており、彼の行為、発言などは常に影響力を持っていた。ここ数十年の活躍の中で、シャリワン・ゲゲン14世は次第に単なる宗教リーダーから、新疆におけるオイラド・モンゴルの民族リーダーと移行したのである。

シャリワン・ゲゲン14世の転生を願う祈祷をめぐる活動などは、彼の指導の下で30年間に蓄積されてきた民族主義思想の体現であり、イスラム系民族の民族主義運動と比較すれば、暴動、流血などが見られず、人々の心の中の信念を伴う比較的穏和な民族運動である。