第19号(2023)
総合研究大学院大学 文化科学研究科 地域文化学専攻 川上 香 キーワード: 山村、焼畑、常畑、茶、自給作物、南アルプス 高度経済成長期以前の日本では、多くの山村で、自給を目的とした作物栽培が行われていた。また、焼畑に付随した茶などの換金作物栽培も行われ、人びとは暮らしを維持していた。昭和30年代に焼畑は衰退するが、現在までの山村の耕作地や作物の変化は、具体的に明らかになっていない。本研究では、静岡市井川地域の山村を対象に、個人の事例を通して耕作地の茶畑への転換と、耕作地の変化に伴う作物への影響について論じた。それらは次のようにまとめられる。
1 耕作地は、焼畑や常畑、採草地の複合的利用から、高度経済成長期には、茶畑への転換と拡大がおこった。昭和60年頃からは、高齢化により茶畑は縮小化した。 2 耕作地の変化に伴い、ヒエやオオムギなどの穀類の自給や、焼畑休閑後に自生した在来茶の利用は、昭和30年代から40年代にかけて終焉を迎えた。 3 自給的作物栽培は、昭和30年代から続く常畑と茶畑の一部で現在も持続している。 |