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文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業 研究成果レポート

1.事業実施の目的
岩手県一関市(旧東磐井郡)一帯には、現在も義経伝説が多く伝承されており、これと関連しながら弁慶や皆鶴姫といった義経と関連する人物の伝説も伝えられている。そこで、今回の調査は、義経伝説に的を絞り、当該地域の生活文化と伝説との関連性について民俗学的に明らかにすることを目的とした。
2.実施場所
岩手県一関市(旧東磐井郡)一帯
3.実施期日
平成24年8月20日(月)から8月27日(月)
4.成果報告
●事業の概要
今回の調査では、岩手県一関市に伝わる源義経伝説を中心に、伝説と関わる史資料の収集とその伝承実態を明らかにするために聴き取り調査もおこなった。
まず、社の創建に関わる義経の祈願文が存在するとされる(『千厩町史』第3巻(523頁))一関市
さらに、千厩町
●本事業の実施によって得られた成果
今回の調査によって「義経」という固有名詞を持つ伝説が、信仰だけでなく近代において天然記念物を選定する際の担保としても機能し、さらに村芝居を演じる中で再認識された可能性を見出せた。伝説が信仰面だけでなく多面的な展開を遂げながらくらしの中で歴史として受容されたともいえるだろう。民俗学における伝説研究は、信仰面だけに偏って論じられてきた傾向があった。もちろん、今回の調査でも信仰における伝説の機能は認められ、調査での重要な視点であることに変わりはない。しかし、そればかりでなく伝説が多様な場で歴史の根拠として受容されてきたことが重要であろう。そして、その際「義経」という固有名詞が歴史としての認定に大きな意義を持っていたのではなかろうか。博士論文でもこうした固有名詞を持つ伝説を取り上げ論じる予定である。よって、博士論文各章をより詳細に論じるための史資料及び視点を今回の調査で得ることができた。
●本事業について
今回は、2回目のRT事業における調査をおこなった。申請により往復交通費及び宿泊費が支給されたことで、調査に集中できた。今後もこうした事情を積極的に活用し、一関市の調査を継続しておこないたいと考える。ただ、今回の調査地も現地における公共交通機関の便があまりよくない。バスなども1日3便くらいしかない地域も見受けられる。よって、短期間で効率的に調査をおこなう場合レンタカーの使用は必須となる。たしかに、事故等の不安もある。しかし、調査地の性質上やむをえない地域も多い。申請手続きをもう少し簡便にできたらよいと思われる。