総合研究大学院大学 文化科学研究科 文科・学術フォーラム 2008

オープニングセッション

オープニングセッション

趣旨及び内容

本セッションは、過去のフォーラムの業績を振り返り、それを今後の諸々の活動へと発展させていくための、本フォーラムの導入部にあたる。自己紹介を含むグループ・ディスカッションの場を設けることで、以後の専攻間交流にとっての意義ある出発点ともなることを目指すものであった。
最初に、前年度までの「文科フォーラム」「学術フォーラム」を「文科・学術フォーラム」の名称で一本化することの意義、また今後のイニシアティヴ活動の目指す方向等について、黒須研究科長よりお話をいただいた。
本フォーラムの大きな意義のひとつは異分野間交流であり、専攻や研究分野の異なる者同士が共に触発し合えるような場を提供することにある。そのためには、個々が立脚する方法論間の差異/ズレを相対的に意識する必要があるだろう。過去のフォーラムにおいて、そういった諸々の「差異/ズレ」を積極的に認識することが、如何に有益な学際的研究の可能性を開いてきたかという点を、続く映像セッション「これまでのフォーラムをふりかえって」にて辿った。17~19年度のフォーラムの模様を収めた映像をダイジェストしたものに適宜、歴代の学生企画委員(七田麻美子、紅林健志、久保田純美)より解説をつけていただいた。
後半のワークショップは、「私にとって『地域(ローカル)』とは何か」という問題についての議論の場とした。全体を小グループに分け、上記テーマに関し議論を行ってもらい、最後にグループの代表者より簡単に報告をしていただいた。「地域」という同一概念に対する個々の認識に違いが生じるかどうかという点に焦点を当てた。このワークショップはまた、2日目のシンポジウムにおける「地域」の議論に先行して、各々の参加者に、自分(あるいは自分の研究)にとっての「地域」概念を明確化してもらうことを目的とするものでもあった。

タイムテーブル

16:10~16:30
これまでのフォーラムをふりかえって(黒須研究科長のお話)
16:30~17:00
これまでのフォーラムをふりかえって(映像+解説)
17:00~17:05
ワークショップの趣旨説明
17:05~17:50
ワークショップ

まとめ

黒須研究科長のお話、及び映像セッションは、以前のフォーラムを知らない参加者の方々にその雰囲気をつかんでいただき、フォーラムの意義について一考していただくための良い機会となった。また、今回が初参加ではない方々においても、過去の企画を振り返ることでフォーラムへの認識を新たにしていただけたのではないかと思う。分かりやすく、且つ充実した解説を付けてくださった三名の解説者―七田氏、紅林氏、久保田氏―の御助力なしにはこのセッションは成立しなかった。ここで、感謝の意を表したい。
また、後半のワークショップでは、「私にとって『地域(ローカル)』とは何か」という漠然としたテーマ設定にも関わらず、参加者の積極的な発言・議論により刺激的な意見交換の場となったことは予想以上であった。学問的立脚点の相違(通時的/共時的、あるいは歴史学的/社会学的/メディア論的/哲学的…etc.)により生じた「地域」概念の多様性は、決して画一的に収斂されることのない「雑多性」そのものとして表面化されることになった。我々の目指す学際的研究の可能性とは、この雑多性の内に鋭く対立しあう思考同士の相互的且つ横断的なコミュニケーションの中にこそ求められるはずである。この雑多性、あるいは「ズレ」を積極的に肌身に感じていただくことのできた本セッションは、文科・学術フォーラムの幕開けに相応しい催しであったと言える。また、2日目のシンポジウムのプレ・イヴェントとして、「地域」に関する参加者各々の興味を喚起し得たという点においても、多大な意味を持つセッションであった。