
韓国古版画博物館名品展
【展示の趣旨・みどころ】
韓国の古版画といって最初に思い浮かぶものは、『
三綱行実図
』だろう。朝鮮王朝
世宗
13年(1431)に成立したこの本は、忠・孝・貞の三つの徳目について、代表的人物のエピソードに図を付して刊行されたものである。その影響は大きく、『
続三綱行実図
』『
東国新続三綱行実図
』『
二倫行実図
』などの後続作を生むとともに、日本にも伝わり孝子伝などに影響を与えている。韓国の古版画については、日本人はもとより、韓国の一般の人々にも、これらの挿し絵以外にはあまり知られていないのが実情である。しかし、韓国にも古くから多くの版画があった。そのような中で、韓国古版画の収集に努めるとともに、その啓蒙にも精力的に取り組んできたのが、古版画博物館館長の
韓禅学
氏である。
古版画博物館は、
江原
道
原州
市の山間にある
明珠寺
という寺院内に併設されている。韓国の古版画はもとより、中国や日本、更にはモンゴルやチベットに到るまで、アジアの広い地域の古版画を収集している。今回は、韓館長のご高配を得て、そのコレクションの内、韓国古版画の名品を中心に100点程を展示することとなった。これだけの韓国古版画を展観することは、日本では初めてだと思われる。高麗時代の仏教版画から、『
天路歴程
』のようなキリスト教関係の韓刻本の挿し絵まで、多様な韓国古版画の世界が一覧出来る貴重な機会となるだろう。
【解説者紹介】
入口敦志(いりぐちあつし)
国文学研究資料館・研究部・准教授
専攻:江戸時代初期の文学と学芸を中心に研究。
[主要業績]
著書:『武家権力と文学―柳営連歌、『帝鑑図説』―』ぺりかん社、2013年7月刊。
論文:「描かれた夢―吹き出し型の夢の誕生―」『夢見る日本文化のパラダイム』荒木浩編、法蔵館、2015年5月刊。