総合研究大学院大学 文化科学研究科 文科・学術フォーラム 2008

ポスター発表

ポスター発表

アジアにおける家族とジェンダーの変容:近代化とグローバル化の時代に

発表者所属名
国際日本研究専攻・国際日本文化研究センター
発表者氏名
落合 恵美子(国際日本文化研究センター客員教授)

研究の内容

近年のアジアにおける急速な経済発展と市民社会の成立は、日本論の問題構成を変えた。欧米と日本だけを比べる日本特殊性論を離れ、アジアの近代社会一般の中で日本社会を論じ、欧米とアジアの両方と比較しながら近代日本を論じることが可能になった。
本共同研究会は、近現代日本とアジアにおける家族とジェンダーについて、上記のような観点からアプローチを試みる。一つの理論的な導き手とするのは、女性は近代になって主婦になったという「主婦化」仮説である。この枠組はいまや欧米や日本の家族およびジェンダー研究の基本枠組となったが、アジアはそもそも多様な社会を含み、伝統的なジェンダーのあり方もさまざまである。「主婦化」仮説はアジアでも妥当するのだろうか。また現代のアジアは急速な近代化を経験すると同時にグローバル化にも曝されている。グローバル化はアジアの家族とジェンダーの変容に、欧米や日本が近代化を経験したときとは異なる条件を与えているのだろうか。
本共同研究では、歴史的には近代史の全体、地域的には少なくともインド以東のアジアを対象とするという広い視野のもとに、社会学、歴史学、文学、人類学、教育学などの分野の研究者による学際的研究を進める。
取り扱うトピックは多岐にわたるが、歴史的変化については欧米の近代家族イデオロギーのアジア各地での土着化や、「新女性」の誕生、日本で再構築された近代的女性観である良妻賢母主義のアジアへの伝播、家事労働者の果たした役割などを、アジアの各地について比較検討する。現代については、共同研究員がそれぞれ実施している各地での現地調査を踏まえながら、家族を支える社会的ネットワークの変容、グローバル化の効果、外国人家事労働者雇用の現状、国際結婚の増加、いわゆる「アジア型福祉国家」政策の功罪、教育熱のゆくえなどについて論じたい。また、全体を通じて、近代化への反発としての母性主義や家族主義の分布、伝統の創造、家族国家観および国家が果たした役割などを糸口に、アジア的特色の有無についても追究したい。