総合研究大学院大学 文化科学研究科 文科・学術フォーラム 2008

ポスター発表

ポスター発表

「満州」学の整理と再編

発表者所属名
国際日本研究専攻・国際日本文化研究センター
発表者氏名
劉 建輝(国際日本文化研究センター准教授)

研究の内容

ここ十数年、日中両国において、いわゆるコロニアリズムへの関心のもとで、かつて帝国日本最大の「植民地」だった旧「満州」に関する研究が著しく進展し、多くの成果を収めた。それは、史料の調査、整理、復刻等をはじめ、関係者の回想や聞き取り、またそれらを材料とする考証や分析などさまざまなアプローチにわたっており、そしてその多くはイデオロギーや個人の情緒に左右されやすいという従来の「満州」研究にありがちな通弊を克服し、より客観的なものとなっている。
しかし、一方、これらの研究は、往々にしていわゆる「満州国」のそれぞれの領域内に限定して行われ、そこに、「満鉄」付属地時代を含む「植民地」全体としての「満州」を構造的に捉える視点や、またその関内(中国)をはじめ、内地(日本)、朝鮮半島、ソ連などとの関連において多角的に検証する姿勢がけっして十分に成立したとは言い難い。それに政治や経済、軍事分野への偏重が依然として続いており、いわゆる「日人」「満人」双方の精神活動と行動原理に深く影響を与えた現地の社会や文化に関する考察がまだまだ希薄であるのも事実である。そのため、多くの研究成果が生まれたにもかかわらず、「満州」をめぐる全体像がいまだに構築できておらず、ましてやその中国や日本にとっての意味付けがほとんど実現されていないと言っても過言ではない。
本研究会では、以上の事情に鑑み、平成13年度~16年度に行われた共同研究「近代中国東北部(旧満州)文化に関する総合研究」の成果を踏まえつつ、可能な限り、構造かつ多角的な視点を通じて「満州」全体像の構築を目指し、あわせてその存在が中国や日本、また朝鮮半島において果たしてきた歴史的な役割とその意味を追究してみたい。