総合研究大学院大学 文化科学研究科 文科・学術フォーラム 2008

ポスター発表

ポスター発表

ペルーにおけるパブリック考古学と文化遺産の活用

発表者所属名
比較文化学専攻・国立民族学博物館
発表者氏名
サウセド・セガミ・ダニエル・ダンテ

背景

ペルー共和国ランバイェケ県フェレニャフェ市にはシカン国立博物館が建設され、同地域で実施されているシカン考古学プロジェクトの成果が展示されている。ここでは、シカン文化(紀元後1000-1200年)に属するエリートの墓からの出土品が主要な展示であり、これを利用してムチック・アイデンティティ(同地域に元来の言語と民族集団)の復興が目指されている。この国立博物館は、現地コミュニティーが自身の伝統を提示できる教育機関としての役割も含めた考古学研究所として建設された。そのため、地域振興に関する会議が行われたり、地域の伝統音楽や踊り、祭などが開催されたりしている。さらに小・中学校の教員と連携して、歴史的な教育プログラムの開発と実践が行われている。

今回のフィールドワークの目的

考古学者の歴史認識とその活用を把握することであったが、シカン国立博物館の考古学者だけではなく、伝統文化の研究や普及活動をしている在野の研究者や他分野の研究者へもインタビューを行うことができた。

成果

地域住民へのインタビューと実際に遺跡で行われた儀礼への参加を通して、遺跡に対する彼らの認識を明らかにすることができた。通常、発掘調査に先立ち、無事故で調査が終了するよう考古学者を含めた調査参加者全員の前で、シャーマンが遺跡の「霊魂」を鎮める儀礼を執り行うのである。また、歴史愛好家が抱く文化遺産への解釈が考古学者のそれと異なることも明らかになった。その結果、地域が抱える文化遺産をめぐる問題が浮き彫りとなり、その問題に関わるグループを把握することができた。