総合研究大学院大学 文化科学研究科 文科・学術フォーラム 2008

ポスター発表

ポスター発表

南東部オーストラリア先住民の環境管理のための運動

発表者所属名
地域文化学専攻・国立民族学博物館
発表者氏名
友永 雄吾

本発表では、南東部オーストラリアを舞台に展開されている川と森の環境管理にともなうYorta Yortaの運動の内実を明らかにする。まずYorta Yortaと土地返還の状況を概観する。従来の研究は概して、北部・中部にて「伝統指向型の生活」を営む先住民に焦点が当てられてきた。これに対し、本発表は、植民地の開始が早く、伝統的な生活を損失したとされる南東部先住民集団Yorta Yortaの土地回復のための闘いに焦点を当てる。ついで、近年ヴィクトリア州とYorta Yortaの間で締結された土地と川の共同管理合意の内実について、政府、Yorta Yorta、その他諸利害関係者間の関係に注目し、それぞれの異なる立場と考えを明らかにする。

2006年の国勢調査における先住民人口は約42万人、全人口の2.3%を占める。ヴィクトリア州アボリジナル人口の割合は州総人口の0.6%にすぎない。これに対し、Yorta Yortaが居住する都市や地方町における人口割合は、4%から20%以上に達し、人口割合が高い。
1860年代から土地回復のための闘いを18回に渡り展開してきたYorta Yortaは、2004年ヴィクトリア州政府との間で土地と川の資源をめぐる共同管理合意を結ぶ。本合意は、オーストラリアで2番目に長いマレー川の一部、大木レッド・ガムが生息する湿地帯として世界最大のバルマ森林を含む約5万ヘクタールを共同管理範囲と定めている。

2001年に設置されたヴィクトリア環境調査委員会は、マレー川流域を含むその他複数河川の水質・水量並びに周辺州立公園の森林状態と生態系に関する調査をヴィクトリア州政府より委託され、2006年と2007年に調査報告書を提出した。結果、製材業者、大牧場主、大農園主を中心とする地域住民、先住民Yorta Yorta、さらに国際、国内環境NGO団体やメルボルン市を中心とする都市の知識人との間のそれぞれの対立や協働が明らかになった。