総合研究大学院大学 文化科学研究科 文科・学術フォーラム 2008

ポスター発表

ポスター発表

日本列島出土朝鮮系無文土器

発表者所属名
日本歴史研究専攻
発表者氏名
李 昌熙
調査日時 2008年6月9日~6月18日
調査地域 西日本(長崎県、福岡県、熊本県、山口県)
調査目的 弥生時代中後期の日本列島と韓半島の土器の併行関係を樹立するために日本列島で出土した朝鮮系無文土器を観察する。土器に付いている炭化物を暦年代のてがかりになる炭素14年代測定用試料として採取する。土器から当時の日韓交流の様相を把握する。

朝鮮系無文土器とは

具体的に粘土帯土器という。土器の口縁部に粘土帯を付けて二重口縁を成している。粘土帯の形態によって円形粘土帯土器と三角形粘土帯土器と分ける。

これまでの成果

朝鮮系無文土器は日本列島で弥生前期末~中期前半頃に集中して出土している。その後、朝鮮系無文土器人はますます弥生社会に同化されて、土器も弥生土器化になる(円形粘土帯土器時期)。朝鮮系無文土器の出土量も少なくなる。後、新しい朝鮮系無文土器が日本列島に登場するが、その量は前より顕著に少ない(三角形粘土帯土器)。両地域で渡来系土器が出土することは当時の交流様相をわかるてがかり中一つである。日本列島では青銅器が威信財として価値が高いもので認識され、弥生人は青銅器やその原料を獲得するために韓半島に往来した。

認識転換の必要性

これまでは朝鮮系無文土器として全部一緒に取り扱ってきたが、韓半島では円形粘土帯土器(韓国式青銅器文化)と三角形粘土帯土器(鉄器文化)は基盤文化も違うし、全然性格が違う土器である。したがって、交流関係を考える時にも区別する必要がある。そして、渡来の理由はあくまでも弥生人によってうまれた結果として認識している。円形粘土帯土器人は最初日本列島になぜ来たかとその後円形粘土帯土器人の渡来はますます少なくなって、また新しい三角形粘土帯土器人はなぜ日本列島に来たかを慎重に考えてみよう。

仮説

弥生人の韓半島への渡来は青銅器や鉄器などの金属器と原料、先進文物を獲得のためのことであるが、円形粘土帯土器人が日本列島に渡来した理由はそのようなこととは無関係である。したがって、その理由は韓半島内の政治的状況と集団の移動などから探す必要がある。後、三角形粘土帯土器も同様に韓半島の状況から探すべきである。

現在の状況

この時期の土器の併行関係は弥生土器が細かく型式学的に分類しているが、粘土帯土器はそのような研究が進んでいなくて、具体的に併行させることができない。型式学分類と分析をしている。炭素14年代測定用として採取した試料は現在前処理中であり、今後土器の併行関係をもとに暦年代を付与する根拠になれる年代測定結果が期待される。