総合研究大学院大学 文化科学研究科 文科・学術フォーラム 2008

ポスター発表

ポスター発表

自律的な外国語学習者の育成と異文化理解の養成に関する研究

発表者所属名
メディア社会文化専攻・メディア教育開発センター
発表者氏名
石橋嘉一

本発表は、European Language Portfolio(ヨーロッパ言語学習帳)という外国語の学習過程の記述を行うCouncil of Europe(ヨーロッパ評議会)により開発されたポートフォリオを活用し、どのように日本の大学生を対象に自律的な言語学習態の育成を試みることができるかを考察した筆者の博士課程研究の一部である。

European Language Portfolio(ELP)は、Common European Framework of Reference for Languages (CEFR) というヨーロッパにおける外国語学習の共通参照枠組みとともにCouncil of Europeにより開発され、ELPとCEFRは共に影響し合ってきた経緯がある。このような外国語学習に重点が置かれた教材の開発は、ヨーロッパの各国が独自の言語を持ち、近隣の諸国とその言語を共用し、またある国では2、3の言語を公務上の目的で使用しているという背景を持ち合わせているためである。Council of Europeは、ヨーロッパ各国の言語がそれぞれの国の文化的遺産の重要な部分を形成していることを早くから認識し、これらの言語の出番を無くすのではなく、各国の言語を保護し、使用を促し、それぞれの文化のへのアクセスを促進してきた。このような教育的な哲学を基に、「人は生涯に渡り複数の言語を自律的に学習していくべきである」という考え方を、Councilでは「複言語主義(Plurilingualism)」と呼び、 ヨーロッパの言語教育政策に取り入れている(Glaser, 2005; Morrow, 2004)。

筆者は、自律的な言語学習を育成する機能を有するELPを日本の大学の英語教育で活用するための手法の検討を行っているが、ELPを日本用にlocalizeさせることが必須であると考えている。これはヨーロッパでも同じで、各国で教育背景が異なるため、それぞれの国で異なるELPが模索され、約20の国で50のELPが存在すると言われている。

本発表では、[1] ELPが開発された背景、[2] ELPの機能と教育的意義、[3] ELPの理論的枠組みと効果検証、について主に扱う。その後、筆者が2008年1月に行ったELPを日本の大学の外国語教育で活用する手法検討のための予備調査(N=126)から、学生の自立的な英語学習の現状と問題点の示唆を提示する。