
都市空間とは5感で得られる要素のすべてを統合したものであり、それら要素がメディアとなって人々の街のイメージを作り上げている。そこで、これまで都市空間を対象に調査を行い、視覚的要素と聴覚的要素の2つの要素に着目し、各要素が街のイメージにどのような影響と、2つの要素間の関係の可能性について明らかにしてきた。本研究では、特に、聴覚的要素が街のイメージに与える影響と2つの要素の複合効果に着目し、その特徴や傾向について明らかにすることを目的とする。
調査は、渋谷、表参道、丸の内、八王子の4地区を対象に行った。各地区において収集した画像と環境音にいくつかの個別の音をそれぞれ加える形でシミュレーションケースを作成し、それらについて画像のみを提示した場合、音のみを提示した場合、その両方を同時に提示した場合の3条件で印象評価アンケートを実施した。設問には20形容詞対による5段階評価尺度の選択肢を用意し、被験者は東京工科大学メディア学部の学生20名とした。
音の影響を明らかにするため、現地の画像と環境音に個別音をそれぞれ加えたシミュレーションケースについてのアンケート結果を比較した。その結果、車やパチンコ店の音は「騒々しい」「落ち着かない」、セミやスズメの声は騒々しさを減少させるなど、渋谷のようなもともとにぎやかな街でも、丸の内のような比較的静かな街でも、各個別音は同じような印象に対して影響を与えることが分かった。
複合効果について明らかにするため、画像のみ、音のみ、両方の3条件のアンケート結果を比較した。その結果、下記の2つの傾向を確認し、[1]のような現象を共鳴現象、[2]を覆被(ふくひ)現象と命名した。
また、各現象について考察した結果、共鳴現象は、視覚と聴覚の印象が調和する時に起こり、覆被現象は、視覚と聴覚の組み合わせに違和感のない場合には視覚優位の、視覚の印象に対してインパクトのある音を流した場合には聴覚優位の覆被現象が起こることが分かった。
以上の結果より、下記のことが明らかになった。