
モンゴル国は、70年に及ぶ社会主義時代を経て90年代に市場経済へと移行し、現在はポスト移行期を迎えている。消費の中心である都市部では、人・モノ・情報・金が集中し価値観の多様化が見られる。また、自然界へ還元できない物質が増加し廃棄物管理という社会問題に直面している。遊牧地域の生活にはどのような変化が起こっているのだろうか。
現代モンゴル社会における個人の行動の多様性を分析する切り口として「ゴミ」に着目する。「ゴミ認識」や「廃棄行動」および「モノとの付き合い方」を文化行動と捉え、その多様性の中に文化的要素を認めようとする研究である。
「モノとの付き合い方」および「ゴミ認識」、「ゴミ化のプロセス」や「廃棄行動」にみられる多様性を分析し、個人の認識や行動を決定付けているものを明らかにする。モンゴル人にとって「ゴミ」とは何か、「ゴミ」の創出に人がどの様に関わっているのかを文化人類学的な視点から問う。また、「ゴミ」を「廃棄する」という一連の文化行動の研究を通して「ゴミの人類学」という新しい分野を開拓する。
調査期間は2008年8月1日~2008年8月29日。ウランバートル市の中心部から東へ50kmのところに位置するガチョールト区の遊牧民世帯で住み込み調査を行った。また、ウランバートル市内では、廃棄物最終処分場、ウランバートル市都市整備課、廃棄物管理局の担当者への聞き取り調査を行った。
近郊の遊牧世帯における人とモノとの付き合い方を調査する事が目的である。生活を共にしながら、日常生活の様子、生活世界に取り込まれているモノ、ゴミの発生と廃棄行動などを観察した。また、一家のライフヒストリーや生活世界に存在するモノのヒストリー(どの様な経緯で今ここにあるのか等)についての聞取り調査を行った。
現地調査では、撮影の許可を得てビデオカメラで人々の暮らしを記録する事ができた。日常生活の様子や生活世界に取り込まれているモノと人とのつながりを、映像資料として編集し発表で使用したいと考えている。