
総合研究大学院大学文化科学研究科学術交流フォーラム2012では、2日目の午後に、学生主体・全員参加のワークショップを行いました。ワークショップでは、2日目午前のシンポジウムでのテーマ「博物館の役割―集める・保つ・伝える・究める―」の議論を受け、特に「伝える」に焦点を絞りました。そして、「研究を伝える」をテーマにグループに分かれてワークを行いました。
今年度の学術交流フォーラムは、国立歴史民俗博物館での開催であり、その豊富な展示に触れる良い機会であるため、ワークショップのはじめの30分の時間は、企画展示「行列に見る近世-武士と異国と祭礼と-」を久留島浩先生(日本歴史研究専攻・教授)に解説していただきながら、見学しました。久留島先生には、展示をつくる上でどのような層の来場者を意識し、どのような工夫を凝らしたのかという点を中心に解説していただきました。長大な絵巻を展示する難しさ、主催者と来場者の展示物に対する視点のずれ等、さまざまな課題と向き合いながら開催された企画展示であったことをうかがい知ることができました。久留島先生の熱心な解説のもと、皆、展示を見ることに夢中で、もっと展示を見たいという様子も感じられました。
展示見学後、自分たちの研究を一般向けに展示するにはどうしたらいいかをテーマにグループワークを行いました。具体的にはワークショップ実施手順にあるように4つの班に分かれ、各班で学生の代表(コア)が自身の研究を紹介し、その内容をもとに、設定された見学者層を考慮しながら展示を構築するという方法を取りました。
約1時間のワークでは、各自が意見を付箋に書き模造紙のフォーマットに貼り付けながら、議論をまとめていきました。
各班でコアとなっていただいた方とその研究テーマ、設定された見学者層は表のとおりです。
班 | コア | 研究テーマ | 見学者層 |
---|---|---|---|
A班 | 林 麗英さん |
家族連れ |
|
B班 | 吉田 小百合さん |
「今めかし」小考-主に物語作品の類型の |
高齢者グループ |
C班 | 王 莞晗さん |
中学生 |
|
D班 | 石橋 嘉一さん |
大学生 |
各班での議論の仕方は多様で、研究方法や内容そのものについて熱い議論があった班、展示に関しての様々な工夫の仕方が熱く語られた班と様々でしたが、各班とも、コアの方の研究の特徴と、展示を見せる対象への配慮のもとで、それぞれの展示案を構築していくことができた様子でした。
グループワークの後は、各班のワークの結果として、議論の途上で貼られた多数の付箋をもとに、展示の内容、方法、工夫などを発表しました。
ワークショップの中で、グループワークの中心なっていただいたコアの4名の方には感謝しております。コアの方から、やってよかったとの声を聴けたのは企画者として喜びでした。また、各グループで学生がコア、司会、書記、発表者などの積極的に役割を担いつつ、学生も先生方も同様に活発に議論を行っていたことが印象的でした。今回のワークショップが、企画意図である、「研究者として、広く世間の人に、大人から子供までに自分の研究の意義や面白さをわかってもらえるようになる」ための能力の向上、考えるきっかけになっていけばと思っています。
学生企画委員 石原 朗子・林 真人