学術交流フォーラムが2年ぶりにかえってきました。今回のテーマは「文化をカガクする?」です。

 私たちの所属する文化科学研究科は、5つの基盤機関においてさまざまな対象を扱い、多様な方法論を用いて研究を進めています。それゆえ同研究科に所属する私たちにとって、“カガク” とは人文科学の規範に根ざした学術研究を指しているといえます。しかしそれは特定の普遍的な分析手法が確立される代わりに、価値判断の留保がなされる“science”とは異なるものであり、明確な定義を行うことは難しいのが現状です。それでも最大公約数的には、文化を“カガク”する営為には、以下の2つの内容が含意されているはずです。1つめは研究に関わる者として、先行の研究史や方法論を咀嚼することで、次世代の人々のために新たな知識を産出するということです。2つめは現代社会を形成する一員として、成果創出の過程で生じた知識や経験を、人々と分かち合い、よりよく生きるための理念や価値を生み出すということです。このことは「公共」という言語を冠した研究領域が、さまざまな研究分野で出現している状況からも窺うことができます。

 以上のような現状認識のもと、学術交流フォーラムの再出発にあたり、私たちは学生・教員間の交流を通して、各自が取り組んでいる研究課題の特徴、各研究分野において蓄積されてきた研究方法論の役割について考え共有することを目的としました。

 これらを達成するため、本フォーラムは次のセッションから構成されます。意見交換と問題解決を促進する口頭発表・ポスター発表、総研大のプロジェクトを知るパネルディスカッション、音に親しみながら研究に用いる「しりょう」の様態を問いなおす探究型ワークショップ、イスラム文化圏に伝わるレシピの再現を通して中東地域特有の食と慣習を体系的に学ぶ体験型ワークショップ、そして身体表現と伝承の役割を再考する神楽の公演です。私たちはこれらのセッションを通して、改めて文化科学研究科における学術研究“カガク”のいまを、参加の方々とともに考え共有することで、人文科学の研究が担う“文化”の未来について発信します。

 今回は全セッションを一般公開いたします。また他研究科の方の発表、他大学一般の方の参加も歓迎します。多くの方々の参加をお待ちしています。
学生企画委員長 東城義則